三河一の賑やかな湊町だった

称名寺本堂前で。


 大浜は三河では一番賑やかな湊町であった。大浜街道の基点でもあった。江戸時代、大浜の湊からは酒、みりん、米、塩、瓦、材木などが江戸へ。大豆、干鰯(肥料)などが江戸から運ばれた。幕末には三河海岸部に「五箇所湊」が選定され、大浜湊はその第一の湊となった。昭和に入ってからは漁港としても、県下一の漁獲量を誇っていた。この港を基盤として町は栄えた。醸造業も盛んで、慶応2年には大浜村に味噌・溜屋が9軒あった。昭和初期には30軒以上となった。塩田も文禄年間からあったそうで、堀川を造って復興させた。明治17年の大浜村の製塩業者は200戸を越えた。大浜街道は大浜塩を信州へ運ぶ重要な街道でもあった。
 人が集まれば家も、店も、寺もふえる。多くの寺院や神社が今も大浜街道沿いに立ち並び、人々を見守る。醸造の蔵や古い家屋のつらなる路地裏には、懐かしい時代の匂いが今も残っている。さあ、歩いて発見、大浜てらまちへ。


大浜てらまちウォーキング

 毎年10月第3日曜日に行われる。十ヶ寺めぐり、演奏会、ふるまいなどあり、多くの老若男女が参加する。大浜は歩いて暮せるまちづくりのモデル地区にも選定されている。

港・寺・蔵・路地
大浜てらまち巡り
大浜地区仏教会の十ヶ寺を回るスタンプラリー。十ヶ寺集めると素敵な記念品も。専用スタンプ用紙は、大浜まちかどサロンにある。(200円)
問い合わせ 碧南市観光協会 ☎0566-41-3311
観音寺
通称大竹観音。信貴山真言宗の寺。宗祖弘法大師はじめ御本尊聖観世音菩薩、如意融通尊を祀る。別堂として水子観音堂がある。
称名寺
家康公幼名竹千代命名の寺。三河松平家と関わりが深い時宗の檀林寺院。聖観音菩薩(県文化財)は松平信忠公の息女の御持仏。
本伝寺
銀杏の寺といわれる浄土真宗の寺。再建された古い本堂と樹齢300年以上といわれる大きな銀杏の木が聳える。
清浄院
金毘羅さんが港町を見守る。浄土宗鎮西派の寺。御本尊阿弥陀如来像には、腹内仏として阿弥陀如来立像(木彫)がおさめられている。
海徳寺
浄土宗西山深草派の寺。御本尊阿弥陀如来坐像(重文)は伊勢からの渡海仏。大浜大仏として親しまれている。
宝珠寺
天文年間羽城の主長田重元が建てた曹洞宗の寺。有縁の医聖・永田徳本の遺徳を偲んで「徳本稲荷」を建て鎮守とした。
西方寺
宗教哲学者・清沢満之終焉の寺。鎌倉時代の開基。真宗大谷派。太鼓堂は新民序の校舎で、碧南の学校教育の発祥の地。
常行院
岡崎の大樹寺八代目住職が隠居寺として創建した浄土宗の寺。寺宝の一つ、日限地蔵(ひぎりじぞう)の参拝者は多い。
林泉寺
本堂奥に座禅堂がある曹洞宗の寺。毎週土・日曜の早朝6時から座禅、作務(清掃)、話合いが開かれる。誰でも参加できる。無料。
深称寺
上の庵寺さん。御本尊は貞女で知られる加藤菊女や加藤四郎左衛門が崇拝していたと伝えられる阿弥陀如来。浄土宗鎮西派の寺。



大浜漁港で。今も200艘余の漁船が漁に出ている。


明和5年、旗本水野忠友は若年寄に出世し、大浜に一万三千石の領地を賜り、大浜陣屋を構えた。陣屋址は公園に整備されている。


日限地蔵は地域の人々に親しまれている。


海徳寺の山門前で。山門には市内唯一の金剛力士像が安置されている。


大浜街道沿いを歩く。右後方の「うお鉄」は古くから魚屋、料理旅館を営み、料理店として開店したのは大正7年。海鮮丼ランチなど、魚料理がおいしい。木曜休み。


後方に碧南市藤井達吉現代美術館、その左が大浜まちかどサロン。



幕末より昭和までの萬金物の資料展示物、六代目勘左衛門─とある。中をのぞくと、もう作り手がいない鉄の釜、鍋や握り鋏の製造工程、貴重な大工・船大工用鑿、草刈鎌など、興味深い年代物が続々。見学自由。

西方寺の前で。右の方に太鼓堂が見える。



宗教哲学者であり大谷大学初代学長を務めた清沢満之の記念館。満之直筆原稿約170点はじめ蔵書、遺品など展示。開館日は金・土・日曜・祝日10:00~16:30、入館料300円。隣接して満之終焉の部屋・執筆の部屋がある(見学は予約制)。

九重味淋の大蔵を背に。1706年に造った酒造蔵を1787年に移築改装した。国登録有形文化財。



大浜てらまち、路地を歩くと懐かしい匂いがする。

藤井達吉現代美術館内にある喫茶むぎの家。オープンな窓ごしに古い町並みが望める。コーヒー(430円)、自家製酵母パンと酵素玄米ご飯のランチもある。

大正7年に建てられた「大正通」の石碑。名鉄碧南駅の南に建つ。このあたり、昔の地名を塩取場といった。



画廊喫茶アミール(以前はフォレスト)は、年中、地元作家や有名画家の個展が続く。店主の森本寛治さん自身も画家。19歳の時、シルクロード一人旅、「衝撃の連続でした」と。以来、シルクロードの女神たちをテーマに描き続けている。月・火曜休み。

角谷酒店の店頭にはずらり地酒の銘柄が。「うちは地酒に力を入れています」と店主の角谷芳男さん。祖父は九重味淋に勤めたが、父が昭和30年に開業した。特に、関谷醸造の「蓬莱泉」が人気。同醸造の「一念不動」を扱うのは碧南では同店のみ。「辛口で肴に合いますよ」



大正元年創業の炭焼きうなぎの店、十一八(じゅういちや)。昔と変わらぬ味に古くからの客も多い。地元の醤油と味醂を今も使う。写真は紀州備長炭でまろやかに焼き上げる四代目の石川伯義さん。うなぎ丼(並1200円、上1500円)、うな重(並1700円、特上1900円)ひつまぶし2000円。火曜休み、月末は月・火曜。

活気ある魚為の売り場。大浜漁港はじめ各漁港から水揚げされたばかりの魚がずらり。午後1時半から5時、日曜は午前6時から12時も。水曜休み。


取材場所
大浜てらまち Google Map