歴史がどんどんと紐解かれてゆく!


今回の歴史散歩は徳川家康が出生した城としても有名な岡崎城周辺。岡崎城は元々総構えを持つ大きな城だった。しかし、現在は外郭部が市街地となっており、かつての壮大な姿はなかなか想像ができなくなっている。そこで、当時の状況を知る鍵として瓦や石垣について岡崎市教育委員会社会教育課の学芸員山口さんに解説していただきながら巡ってゆく。


岡崎城天守閣

岡崎城天守閣


1.岡崎城 天守閣で三つ葉葵紋の金箔瓦と鯱瓦を見学


2018年の岡崎城跡天守台石垣の発掘調査において、三つ葉葵紋の金箔瓦が出土。現在は岡崎城天守に展示されている。全国的にとても珍しい出土品となるという。
瓦師・細井新助の銘文が入った鯱瓦も展示されている。細井新助に関しては、謎に包まれた部分が多くどんな人物だったかについては分かっていない。


三つ葉葵紋金箔瓦の展示

三つ葉葵紋金箔瓦の展示

鯱瓦の展示

鯱瓦の展示


2.御旗公園


御旗公園 田中吉政像

御旗公園 田中吉政像

御旗公園には、ここ岡崎城周辺を静かに見守っているかのように田中吉政の像がある。
徳川家康の関東移封後に豊臣家臣の田中吉政が入城したのは天正18年(1590)のことである。吉政は東国の家康に備える重要拠点として岡崎城城郭の整備・拡張を進めた。東・北・西の外周には、後世に田中堀と呼ばれる総堀を巡らせ、土塁を築き、城の範囲を画定した人物だ。
2019年に御旗公園で行われた発掘調査により、「総掘」の痕跡が確認された。


3-1.松應寺と松應寺横丁


松應寺横丁


さて、次に向かうのは松應寺。このお寺は少し造りが変わっている。お寺の中に松應寺横丁と呼ばれる昭和のレトロな街並みがあるのだ。
ここは1560年、徳川家康公が父・松平広忠公のために建立した由緒ある寺。
広忠公御廟所は、岡崎市の史跡に指定されている。


3-2.松應寺-太子堂


松應寺 太子堂

松應寺の境内には「太子堂」がある。文化2年(1805)に大工職人たちの発願により建立される。ここでは、 聖徳太子を職能神として信仰する同業の職人達が集まって、太子像を祀り、飲食、会合などを行う太子講が行われていた。


3-3.松應寺-瓦師細井氏が寄進した聖徳太子絵画


現在でも建築業の職人たちが旧暦の1月21日もしくは22日に松應寺へ集まる。集まった日に、必ず開かれる掛け軸がある。これは、瓦師の細井新助が寄進した絵画「聖徳太子孝養図」だ。細井新助は瓦師の中でも特別な存在であったことが分かる。


松應寺 聖徳太子孝養図


4-1.甲山寺


甲山寺 護摩堂

甲山寺 護摩堂

甲山寺はもともと最澄上人が安城に創建したお寺だった。しかし、1530年に、松平清康公が岡崎入城の折、岡崎城の鬼門鎮護として移転建立されている。家康公の父広忠が鳳来寺薬師仏に祈った後に家康公を授かったことを喜び、護摩堂を建立したという。


4-2.甲山寺-鬼瓦に細井氏の銘文あり


甲山寺 鬼瓦

甲山寺 鬼瓦

ここ甲山寺の本堂に使用されていた鬼瓦に瓦師・細井氏の銘文がある。銘文には「元禄十五年午九月十五日 四天王寺住藤原 三州額田郡岡崎細井新助作」と書かれている。瓦師細井氏の所在地は六供町であったのか。はたまた、甲山寺お抱えの瓦師であった可能性もある。細井氏の謎が解明される日は近いかもしれない。


5-1.六所神社-徳川家光改修


六所神社 権現造りの本殿

六所神社 権現造りの本殿

岡崎に進出した松平清康により勧請された明大寺の六所神社は家康誕生の際、産土神として拝礼があった。寛永11年(1634)に上洛した徳川家光は、家康ゆかりの六所神社の改築を命じ、同13年に社殿は完成した。現存する社殿および神供所はこの造営によるもので、権現造りの本殿・幣殿・拝殿、神供所、楼門が国指定の重要文化財になっている。


5-2.六所神社の石垣


六所神社 石垣

六所神社 石垣

寛永年間の改築の時に築かれた石垣も残る。石垣は割石積みで、横方向の目地が通るのが特徴だ。慶長5年(1600年)に関ヶ原の戦いの後、石材の加工技術と積み方が格段に進歩した。


6.菅生川端の石垣


菅生川端石垣

菅生川端石垣

岡崎城へ戻る途中にある菅生川端石垣も面白い。石垣の総延長は約400mにも及び、菅生川に沿った直線的な形状に3か所の枡形が突出している。
ここの石垣の面白いところは、石垣の積み方がバラバラであること。石垣は基底部から数段を残し、それより上部は多時期に渡る積み直しをしていたのであろう。
近世を通じて修築が繰り返し行われたことが分かる。

7.岡崎城跡の石垣

岡崎城跡の石垣は、中世から近世にかけての複雑な縄張りを構成する遺構。石材の加工度と積み方を観察することで、様々な石垣の様相が見られるのが特徴だ。
自然石をそのまま使用して積んだ「自然石積み」、割った石材を使った「割石積み」、さらに加工した石材を使った「切石積み」など、時代によって石材の加工や技法にも違いがある。
先ほど紹介した六所神社の石垣と比較してみるのも面白い。


岡崎城跡の石垣

岡崎城跡の石垣

今回の歴史散歩ルート



※出典:みどり1月号


取材場所
岡崎市康生町 Google Map