西条城主 吉良氏の菩提寺



名鉄西尾駅から西へ約3キロ、茶園が広がる界隈に實相寺はある。創建は亀山天皇文永八年(1271)、吉良満氏の菩提寺として開基された。實相寺開山は京都東福寺の開山聖一国師により開かれた。その後、天文十年(1541)に妙心寺派に改められた。文化財を多数有する實相寺の境内を歩いてみた。



1. 三河クロマツ群生 [市指定天然記念物]


境内の入り口に立つと真正面に釈迦堂が見え、その両脇と釈迦堂を囲むようにクロマツ群生がある。文永8年(1271)實相寺の伽藍は松林の中に建てられたと伝わる。この景観の歴史的価値は高く、三河クロマツの樹林としても希少である。


2 釈迦堂[県指定文化財]



桁行三間、梁間四間、宝形造、柿葺で、内部には吉良満貞発願の釈迦三尊像、四天王像などが祀られている。永禄4年(1561)に織田信長によって焼かれたため天正年間(1573~1592)に弘忍寺仏堂を移築したとされていたが、昭和49〜50年の解体修理工事で「永禄二年四月廿四日鴨江寺之住呂昌政」などの墨書が発見された。


3 木造釈迦三尊像(釈迦堂内部)[県指定文化財]


實相寺釈迦堂の本尊。胎内に納められた結縁文書から、貞治元年(1362)に吉良満貞、實相寺第五世太山一元のほか、多くの結縁者の発願によって造立されたことがわかり、南北朝時代の基準作として重要である。4月第2日曜日の花まつりで年に一度、ご開帳される。


4 四天王像(釈迦堂内部)[市指定文化財]



釈迦三尊像に随侍する四天王像。これらも4月の花まつりで年に一度、ご開帳される。


5 方丈(本堂)[市指定文化財]



慶長8年(1603)に再建された現存する方丈は木造切妻造、平屋建、桟瓦葺。古図によると本来は入母屋造、桧皮葺であったと思われる。内部は臨済宗方丈の整った形を示し、再建された江戸時代初期の雰囲気をよく遺している。平成27年2月に、今後の保存・活用を考えて国登録文化財から市指定文化財に指定されている。



6 八葉宝鐸型梵鐘[県指定文化財]



南北朝時代(1336~1392)に鋳造され、竜頭は双頭形の和鐘の形式。この鐘には複数の伝説がある。


7 庫裡[市指定文化財]



江戸時代元禄年間(1688~1704)に再建された木造入母屋造、平屋建、桟瓦葺、もとは茅葺であった。前面土間とその奥の床上部は間仕切りがなく、大梁を縦横に架け豪壮な大空間を造る。禅宗伽藍構成上欠かせない建物である。方丈同様、国登録文化財から市指定文化財に指定されている。


8 古井戸



おそらく創建当時から存在したと思われる。この古井戸には伝説が複数あり、梵鐘が古井戸より出土した、古井戸の他端は竜宮に通じているなどが語り継がれている。


取材場所
西尾市上町 Google Map