作家として教師として南吉が過ごした第二のふるさと安城
JR安城駅前商店街を歩いてみると、店舗や公共施設などの建物に壁画が数多く描かれていることに気がつく。この壁画は「南吉ウォールペイント」というもので、安城ゆかりの童話作家、新美南吉の作品を題材とした作品だ。
童話「ごんぎつね」などで知られる新美南吉は、昭和13年に安城高等女学校の教師として赴任し、その年に入学した生徒の担任として卒業まで4年間を受け持った。南吉が安城で過ごした5年間は、短い人生のなかで最も輝いた青春時代といえる。
南吉が通勤路としていた駅前商店街には、南吉の日記に登場したり、作品のヒントになった商店などが今も点在している。南吉に思いを馳せながらJR安城駅界隈を巡ってみた。
南吉の願いごと
JR安城駅南口を出て右へ曲がると南吉の肖像が描かれた大きな壁画が目に入る。ここには7つの作品「おぢいさんのランプ」「貧乏な少年の話」「蟹のしやうばい」「ごんごろ鐘」「王さまと靴屋」「うた時計」「ごぞうさんのおきょう」のワンシーンが描かれている。
手袋を買いに
商店街を西から東へ歩いていくと、お話に登場する子狐が手袋を買いに出かけ、雪のなか手袋をくわえている壁画がある。
石
さらに進むと右側に、石に腰かけている南吉のほっとしている表情に出会う。
商店街を歩く南吉
南吉は、JR安城駅前商店街を通勤路としていた。背広に帽子、手には英語の本とステッキという当時の新美先生が描かれている
牛鍋を食べる南吉
南吉が食事をしに訪れていたことから、牛鍋を食べる様子が描かれている。吉野屋には、当時の机が残された「南吉の間」がある。
笑顔で走る南吉
昭和16年3月、岩津天神へ遠足に行った時の写真をモチーフに描かれた。教え子たちとともに楽しく過ごした遠足の写真は、笑顔の南吉を見ることができる貴重なもの。壁画の南吉もとても楽しそうだ。
南吉が食事をしに訪れていたことから、牛鍋を食べる様子が描かれている。吉野屋には、当時の机が残された「南吉の間」がある。
ラムプの夜
昭和16年2月に開催された学芸会のために書かれた戯曲がモチーフ。影絵からやってきた訪問者の様子が描かれている。
花のき村と盗人たち
お話に出てくる盗賊の弟子たち4人が、建物に忍び込もうとしているところ。
安城高等女学校址碑・ででむし詩碑・南吉のうた庭園
当時、南吉が赴任した安城高等女学校は学制改革により昭和23年に愛知県立安城高等学校となり、昭和54年に赤松町へ移転。現在は安城市立桜町小学校が建っている。小学校の敷地内に、安城高等女学校址碑、ででむし詩碑、南吉のうた庭園がある。
南吉の下宿先
昭和14年から17年まで、南吉は大見坂四郎家の門長屋の一室に下宿していた。南吉が毎日顔を洗った井戸も残っている。ここは住宅街にある個人所有物件なので見学はなるべく10時から15時までの間にしたい。
南吉の資料収蔵
安城市歴史博物館には、当時の勤務簿、学報のほか、南吉が添削した生徒の作文帳などが収蔵されている。常設展示ではその一部が公開されている。
※この記事は2016年01月10日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。