6組の大提灯と柱組み一式:昭和44年愛知県民俗資料(有形民俗)文化財に指定


西尾市一色町の中心部を南北に縦断する目抜き通り(本町・中町本通り・銀座通り)の西側に、曲がりくねりながら南北に伸びる一色古道がある。南の諏訪神社から北へ約1キロ、風情ある町並みを眺めながらお寺巡りが楽しめる。


1.大提灯まつりの諏訪神社



室町時代の永禄年間(16世紀後半)、夜ごと海の魔物が現れて人や田畑に害を及ぼしたため、この地にやって来た行者が信濃国の諏訪大社の御分霊をうけて祠を建て、神前でかがり火を焚いて祈祷したところ、魔物が現れなくなったという。これが一色の諏訪神社のはじまりであり、天下の奇祭「三河一色大提灯まつり」の起源とされている。江戸時代初期にはかがり火が提灯による献灯となり、次第に氏子の組が提灯の大きさと華やかさを競い合うようになった。
現在は6組の氏子がそれぞれ2張りの提灯を掲げる。最も大きいものは柱の高さが17m、提灯の直径が5.6m、高さが10mもある。どれも神話や歴史を題材にした絵が極彩色で描かれ、灯りがともると幻想の世界が広がる。
今回はこの諏訪神社を起点に、一色古道を北へ向かってのんびり歩いてみた。


諏訪神社の鳥居をくぐり、お散歩スタート

ふだん提灯が格納されている建物


2.懐かしい雰囲気の一色古道



風情ある日本家屋や昭和レトロな建物が点在する、昔懐かしい町並み。これが一色のまちなかに残る一色古道だ。複雑に入り組んでいて迷子になりそうな細い路地を歩くのは、なんだかワクワクする。


3.崇用寺の三十三観音



山門の右手に、西国観音霊場の写し三十三観音堂がある。中央の奥には阿弥陀仏が据えられている。観音信仰が盛んだったことを物語る風景だ。


4.一色氏発祥の地、安休寺


安休寺の重厚な山門


安休寺は、一色有義が父・吉良満義の菩提を弔うため正平12年/延文2年(1357)に創建した。境内の奥には満義と有義親子のものと伝えられる墓がある。一色氏は吉良氏と同じく足利氏の流れを汲む一族で、足利義氏が三河国守護に任じられた後、この地で勢力を伸ばした。この寺は、日本最初の幼稚園を開設した関信三の生誕地でもある。


一色氏発祥の地の碑

吉良満義と一色有義の墓


5.藤原藤房の墓所、養林寺


後醍醐天皇の側近で、建武の新政では要職を担った藤原藤房の墓がある。平重盛や楠木正成と共に「日本三忠臣」といわれる人物で、天皇をいさめることもできる人物だったという。後に突如出家した。また門前の石碑の側面は、柳原義光伯爵(歌人として知られた柳原白蓮の義兄)の書である。


藤原藤房の墓


6.地域に開かれた普元寺


境内の四季を楽しむ


普元寺の本堂

天台宗の草庵として始まり、応仁年間(15世紀半ば)に浄土真宗に改宗した本願寺派のお寺。音楽法話、お寺マルシェ、四季折々の催しなど各種イベントを積極的に開催する、地域に開かれたお寺だ。納骨堂・永代供養墓を設けたり、お寺全体を心穏やかに癒される空間として整備したりと、今を生きる人々のニーズに合った場づくりをしている。


取材協力:一色大提灯保存会 顧問 杉浦 平六さん


ちょっと足を伸ばして 「一色学びの館」へ


三河一色大提灯まつりについて学べる施設。まつりに使われる大提灯のレプリカを展示。入館は無料。

住所:西尾市一色町一色東前新田8
TEL:0563-72-3880
営業時間:9:00~18:00
定休日:月曜日(祝日を除く)


取材場所
西尾市一色地区 Google Map
諏訪神社へのアクセス
名鉄西尾線「西尾」駅下車、名鉄東部交通バス「三河一色」行に乗り換え、「大宝橋」下車