この2年、猛威をふるう新型コロナウイルスの影響で、日本全国のお祭りが開催中止を余儀なくされている。しかし、人の輪を絶やさない試みを続けているお祭りがある。1954年(昭和29)にスタートし、今年で68回目を迎える『安城七夕まつり』だ。『仙台七夕まつり』・『湘南ひらつか七夕まつり』と並んで『願いごと、日本一。』というコンセプトで有名なお祭りには、何があっても輪を絶やすまいと奮闘している人達がいる。今回は、このように奮闘されている一人である安城七夕まつり実行委員長の杉山敏幸氏に話を伺った。



本日はどうぞ宜しくお願いします。私は西尾市で生まれ育ったので、子供の頃からよく安城七夕まつりには家族で出かけました。とても規模の大きいお祭りで毎年楽しみにしていたのですが、ここ2年連続の中止。これをとても残念に思っています。やはり、準備を進めていた方も寂しく思っているのではないでしょうか?


そうですね、心待ちにされていた方は寂しがられていました。七夕まつりの準備は、毎年4月頃から始まります。私たちも来場者の笑顔を見る為に準備していたのでとても残念です。お祭りは元来なくても生活には困らないと思いますが、中止になって心の空虚はみんな感じていると思います。毎年8月の第一金曜日から3日間、いつも日常にあるお祭りでした。私はこのお祭りを安城市民のソウルフェスティバルだと思っています。この思いは2年間の中止で一段と強くなったとも感じています。


今年で68年目。安城市民にとって生活の一部に『七夕まつり』があったわけですから、当然心の空虚を感じていると思います。杉山さんの子どもの頃には、七夕まつりはすでに開催されていたと思うのですが、当時の『七夕まつり』について思い出を聞かせてください。


私が小さい頃のお祭りは区画整理される前の道路での開催でしたので、左右から伸びる竹が交差していて本当に飾りの中を歩く感じでした。今と違って吹き流し(紙風船やくす玉に五色のテープを貼り付けたもので、織姫に供えた織り糸を表す)の長さも長かったので親父の肩車で吹き流しを触るのが楽しみだったですが、汗をかいているとテープが首に巻き付いてしまい死にかけたこともありました。


七夕飾り、私も小さいころ行ったことがあるので想像がつきました。吹き流しなどの七夕飾りは安城市民の手作りだそうですね。七夕まつりの始まりも気になります。


始まりは市役所の人が、商店の人に言われて当時の商工課が調べて始まったと聞いています。そこで市役所の人が調べて「こういうお祭りがありますよ」と案を持って来てくれた。商店の人にとって8月は閑散期。ニッパチと言われていて、何とか人を呼びたいという想いがありました。商工課の始まりは1948年でした。『湘南ひらつか七夕まつり』を参考に『安城の七夕まつり』が始まりました。


大変な時期に安城市民が知恵を出し合ったわけですね。そこから、日本三大七夕と言われるまでに成長した。「願いごと、日本一。」というのも、キャッチコピーのようになっていますが、このように言われるようになった経緯も教えてください。


日本三大七夕の3番目と言われてはいるものの、実はいろいろな地方で「3番目はどこだ?」という論争が起こることがあります(笑)。しかし、3番目を安城市が競い合うことはないという結論に至り、安城七夕まつりは「願いごと、日本一。」というコンセプトに変えました。その根拠もあります。安城市に1960年頃できた『七夕神社』。この名前の神社は安城市にしかありません。七夕というと願いが叶う、そして願いをかなえる神社がある。「安城市はこれで行こう」となりました。その後、公式キャラクター『きーぼー』が生まれます。


『きーぼー』のことも少し調べました。みんなの願いごとを星に変えて天の川にいる『願いごとの神様』まで届ける妖精で、安城市の花である『サルビア』を頭に付けて手には『金平糖』と『星』を持っている可愛いキャラクターですね。『金平糖』は『きーぼー』の大好物で、願いごとを叶えたご褒美に願いごとの神様から貰ったものだと知りました。願いごと、日本一で、可愛いキャラクターもいて、安城市民のみならず日本全国から人が訪れるのも納得です。


さりげなくきーぼーのマスク

さりげなくきーぼーのマスク


まだまだこれからです。ホームページに七夕飾りの作り方を載せたり、若い人をどんどんと参加させたり、やるべき課題は沢山あります。来年が市制70周年、再来年が第70回ですので、何かできないか検討中です。今までと同じお祭りができるとは限りませんので、新しいカタチを模索しています。例えば暑さ対策として期間の検討もし始めています。


お祭Web上で願いごとを納めて奉納するということを、ここ2年行っていらっしゃいますね。そのことについて教えてください。


コロナ禍で安城七夕まつりが中止となっても人の輪を絶やしたくなかったので、オンライン上で願いごとを投稿できる「オンライン願いごと短冊」専用ページを公開しました。昨年は応募数695枚で、今年は698枚です。今年はコンテストがない代わりに、サイトの方を見易くさせて頂きました。この短冊は9月に「七夕神社」に奉納します。


ワクチン接種率が上がりコロナが落ち着いたら、日本全国のお祭りも徐々にカタチを変えて開催されることが予想されます。そこで、安城七夕まつりが開催されることを願って、未来に向け希望に満ち溢れたメッセージをお願いいたします。


『安城七夕まつり』は「願いごと、日本一。」を掲げています。来場者並びに関係者の方たちの願いを天の川まで『きーぼー』に届けて貰えます。来年は、多くの願いがリアルに集められることを願います。そして皆さんの笑顔と再会できることを願っています。


安城七夕まつりカウンター

安城七夕まつりカウンター


たくさんの温かいお話が聞けて嬉しかったです。これからもパワーアップしていく安城七夕まつり、楽しみにしています。本日はありがとうございました。


インタビュアー
石原 智葉さん
石原 智葉さん

昭和48年9月4日に西尾市で生まれ育ち、OL時代を経て26歳で結婚。一級建築士試験(合格率10%難関試験)を44歳で取得。一般の方向けに自然素材を使った家づくりについて勉強会などを自社で開催しながら、設計業務をしている。普通の主婦から一級建築士になったからこそ培われた視点で西尾市や近隣の自然に寄与する家づくりを提案している。