地域の皆様から愛される日本一のオンリーワン地域密着メディア企業を目指し、開局して22年目になるキャッチネットワーク。その立ち上げ・運営はいばらの道だった。地域活性化・社会貢献を掲げて様々なチャレンジを続けてきた背景を川瀬社長にお伺いした。

 川瀬社長は1991年キャッチネットワーク開局から携わっておられますが、どのような経緯で立ち上げることになったのでしょうか。

 地域活性化のためにどのようなことをやればいいのかを検討する研究会を刈谷市がやられていたんです。当時、東京一極集中を排除して地域を活性化しようと郵政省がニューメディアを視野に入れたテレトピア計画を推進していました。これと平行して豊田市では、市役所とトヨタ自動車さんが社会貢献の一環として研究会をつくってひまわりネットワークを立ち上げたんです。市役所から商工会議所に、ケーブルテレビ事業を立ち上げるにあたって民間のチカラを借りたいということで商工会議所の有力なメンバーであるトヨタグループ各社から人材が集められました。
 当時私はデンソーで新規事業を担当していまして、まさにケーブルテレビを視察して面白い事業だな、やりたいな、と思っていたので真っ先に手を挙げました。この動きは刈谷市だけではなく県の広域行政圏として刈谷市、安城市、高浜市、知立市、碧南市の碧海5市が協力して拡大しようというものでした。
 一方、商工会議所も碧海サミットという組織があって、当時の鈴木愛知県知事もお呼びして経済面から碧海5市を活性化するという勉強会をやっていました。そこに、刈谷市でこんな動きがあるから一緒にやりませんかということで、碧海5市CATV合同委員会が設置され、5市でのCATV事業展開シナリオを策定していったんです。

 西尾幡豆地域にエリア拡張する際、どのようなご苦労があったのでしょうか?

 西尾市でもケーブルテレビを検討されていたんです。しかし、なかなか前に進んでいなかった。この事業は設備投資事業なのでバック(株主)がしっかりしていないとうまくいかない。そこで、西尾市自らがやるのではなくて岡崎市のミクスネットワークかキャッチネットワークのどちらかにやってもらおうということで2社でプレゼンとなり、キャッチネットワークに決定。しかしふたを開けてみると様々な問題がありました。西尾エリアはほとんどが電波障害エリアだったんです。果たして事業としてうまくいくのかという状況でした。中電さんと交渉し、当社が電波障害対策事業の委託を受け、現状のケーブルを撤去し新しいケーブルを当社の費用で設置することで問題は解決しました。
 2つ目の問題は株主。社会貢献的な事業なので、地域の皆さんが本当に情報化を通じて地域を良くしたいという強い気持ちがなければうまくいきません。碧海5市の場合はトヨタグループが中核となり多くの企業が出資してくれましたが、西尾市の場合は出資対象の企業規模が若干小さくなります。このような状況のなかで西尾商工会議所や西三河南部懇話会が中心となり苦労に苦労を重ねて出資社を集めていただきました。
 また、具体的な運用でも問題がありました。コミュニティチャンネルを碧海5市と西尾市で分けたいというのです。それぞれ独自の地域情報を発信できれば非常にいいんですが、我々としては1つのチャンネルで効率的にいきたい訳です。このような事情があり、当初は2つチャンネルがある状況でした。今はチャンネルを一本化し、様々な企画番組も西尾市を入れて6市対応となっています。これらの調整には何年も苦労しました。その際、西尾の方達に強力なバックアップをしていただきました。西尾の皆さんは団結力が強くて熱いですね。


 定額制のブロードバンドインターネットの開始、災害放送を広く行うコミュニティFMラジオ局の立ち上げなど、新サービスを次々に立ち上げられてきた訳ですが、この22年間を振り返って、地域の生活にどのように影響しているとお考えでしょうか。

 キャッチネットワークは「地域情報化を通じて、まちの活性化と安全安心のまちづくりに貢献する」というミッションをいただいて邁進してきました。活性化とは、地域の住民が、地域の様々な情報を通じて、地域を愛する心を育むということで、コミュニティの活動に参画し、まちを良くすることにつなげていくことです。
 安全安心では特に災害放送にはこだわりを持ってやっています。特に東海豪雨の後、ケーブルテレビだけではメディアとして不十分であるとの要請があり、無線メディアであるコミュニティFMラジオ局、株式会社エフエムキャッチを立ち上げたんです。

 東日本大震災の時、FMラジオが非常に役立ったと聞いていますが。

 そうですね、収支が苦しい事業でありながらコミュニティFMラジオ局は増えているんですよ。それはやはり行政の立場から見て災害メディアとして必要なメデイアはコミュニティFMだということなんですね。

 地域密着メディアとして今後、どのようなビジョンを描いておられるのでしょうか。

 3つの融合を課題として取り組んでいます。ひとつは放送と通信の融合。インターネットのネットワークを通じて、映像配信サービスをどんどん普及させていきます。次に有線と無線の融合。スマホなどの端末に溜め込んだ映像をいつでも見ることができるサービスです。3つ目は、固定端末(テレビ)と移動端末(携帯やタブレット)にも映像が飛ばせるということで融合がおきています。これらの融合を解決するインフラ整備を最先端の技術を取り入れて進め、出来るサービスをどんどん実現していきたいと考えています。
 IT機器が進化していく反面、使い方がわからない、という方々へのサポートも考慮していかなければなりません。コミュニティチャンネルの情報をWEB上で流すということも今考えています。「こんなサービスないの?」と言われたらホテルのコンシェルジュのように親切丁寧にご案内するコンセルジュサービスにも注力していきたいです。
 社会貢献を地域に対してやっていくという姿の中でいちばんキーになるのは社員です。社員の満足度が上がっていなければ社会貢献なんてできませんよね。また、一緒に事業をやるパートナーの満足度も上げないとできません。これによってはじめてお客様の満足度を上げる活動ができるのではないでしょうか。このような考え方で地域の皆様から愛される日本一のオンリーワン地域密着メディア企業を目指しましょうというのが、我々の進む方向です。


インタビュアー
畔柳 千尋さん
畔柳 千尋さん

神戸大学大学院で文化の街づくりを学ぶ(学術博士)。西尾市の養寿寺の長女として、現在はお寺でイベントを企画。趣味は雅楽の笙と琵琶。