「岡崎が大好き」と言うジャズ・シンガーの今岡友美さん。天性の伸びやかな歌声と歌唱力、飾らない人柄で人気を集める。岡崎のイベントはもちろん、名古屋、東京のライブハウスにも出演。スタンダードのみならず、「Amazing Grace」などのゴスペルやビートルズの 「Come Together」まで、多様なジャンルに挑戦している。「きょう歌わせてもらえることに心から感謝し、ありったけの気持ちを込めて歌っていきたい」と話す。

 子供の頃は、どんなお子さんでしたか。どんな遊びをしていましたか。

 毎日、同級生たちと暗くなるまで外で遊んでいる子供でした。遊び過ぎてご飯が食べれなくなってしまうくらい(笑い)。母が歌上手で、子守唄をよく歌ってくれました。小さい頃から歌は好きでした。でも、誰かに披露するということはなかったです。

 本格的に歌い始めたのはいつ頃ですか。

 高校時代のバンドではキーボードを担当していましたが、就職をした会社にもバンドがあったんです。「ボーカルの女性が産休に入るから、友ちゃん、ちょっと歌ってくれへん」と言われて、そこで歌ったのを、岡崎のバンドの人が聴いて「うちのバンドでも歌えばいいじゃん」って。ホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリーなどの曲を歌っていました。

 その頃に内田修さんとの出会いがあったのですか。

 岡崎のライブハウスへ内田先生がおみえになって、「君はジャズにむいている。ジャズを歌ったテープを僕のところに送りなさい」と言われました。内田先生からご連絡いただき、名古屋のライブハウスでお会いしました。その時に生のジャズというものを初めて聞いたんです。ジャズを歌いなさいと言われ、あわててCDやレコードを聴いてみたのですが、ハスキーな歌声で、すごく大人の歌という感じでした。とてもこんな風には歌えない。でも、内田先生が「友ちゃんは友ちゃんが好きなように歌えばいいよ」と言ってくださったので、「ほいじゃあ、元気に歌っちゃお」ということになりました。

 どんどんドアが開いていくように、道ができているのでしょうか。そこからジャズのレッスンが始まったのですね。

 レッスンはしていません。上手に歌えるようになりたいという途中段階なんです。ボイストレーニングもしていません。

 えー、それであの声なんですか。すごい、驚きです。尊敬しているミュージシャンはいらっしゃいますか。

 クイーンのフレディ・マーキュリー。大好きです。

 私も大好きです。七色の声も素敵。

 美空ひばりさんも好きですね。一曲の中で、いろんな声色を使い分けている。

 今はどんな感じで練習されているのですか。

 特に練習もしないです。何百枚というCDがクルマの中に入っていますから、移動時間に聴いて「この人のここの歌い方いいな」とか、英語の歌詞を覚えたりとかしていますが。

 今岡さんが歌っていて、幸せだなとか、嬉しいなと思うのはどんな時でしょうか。

 まず、いろんな人に会えることです。ジャズの場合は毎回、演奏者が違うんです。初めての人とも「初めまして、今岡です。きょうはよろしくお願いします」「じゃあ始めましょうか」と言って演奏できる。それがすごく楽しい。即興で入るイントロで、ああ幸せと思いながら歌に入るわけです。「テネシーワルツ」でも、百人いれば百通りの「テネシーワルツ」ができるんです。

 同じものは二度とないということですね。

 それがすごく楽しくて。共演者の人柄とかすごく分かって、演奏中に会話するんです。

 一緒に演奏すると、深いつながりができますよね。

 エッセンスを投げ入れてくれて、すごく面白いんです。

 ところで、今岡さんのこれからの夢は? こんなことやってみたいなとか。

 笑われちゃうかな。健康に気をつけることですね。ご飯を食べないと歌う元気もないし、眠れないと歌う元気もない。結局、健康で普通の生活を歩みながら、そこに歌が付いてきてくれたらいいなと。

 そうですか。意外な気がしますが。

 お客さんに届け、届けと思いながら歌っていた時期もあったんですが、それも最近おこがましいなと思うようになって。同じ時間に同じライブ会場にいたお客さんでも、「きょうはすごくしっとりして大人っぽかったね」と。一方で「きょうは友ちゃん、元気がなかったね」と言う人もみえる。受け取る方の体調とか、気持ちとかで、こんなに違うんだと思った。私はとにかく、その時の気持ちを思い切り込めさえすればいいのだと思ったら、気が楽になりました。

 私の場合、歌詞がないので、勝手に自分の妄想の世界に入っていってしまいますね。

 例えば「テネシーワルツ」を歌っても、この曲が聴く人の人生の中のどこの場所にあるのかで受け取り方が違ってくる。私はたまたまそれを提供するだけかなあと思うんです。

 先ほどのお話で、健康に関心持たれていらっしゃいますが、具体的に話していただけますか。

 結婚して三年目くらいに、旦那さんが大きな病気をして入院したんです。今は奇跡的に治り、普通の生活を送っていますが。私も二年前に急性膵炎で入院したんです。同室の人たちは、みな、がんの人たちでした。どんな言葉をかけたらいいのか。そんな時、乳がんの従姉妹が見舞いにきてくれたので、「言葉をかけてほしい」と頼みました。彼女が「大丈夫よ。きょうのご飯がおいしいと思って食べたら、明日もカーテン開けることができるわ」「私は明日を生きようと思って一週間生きて、一か月も生きて、そして十年も元気に暮らしているんだから、全然あなたも大丈夫だから」と話したら、その人の顔が明るくなった。その人が欲しかったのは「大丈夫」という言葉だった。その人も早く元気になって、普通の生活がしたいんです。だから今、私って幸せの真っ只中にいるんだなあと改めて感じたんですね。

 いいお話ですね。なんかウルウルしちゃいました。

 と言っても、人にやさしいわけではないんです、全然(笑い)。がんばらない。自分勝手に生きていると思います。


「ありたっけの気持ちを込めて」と語る今岡さん(左)と川島さん

 個人的な質問ですが、歌が上手になるコツがあったらアドバイスをお願いできますか。

 女優になることですかね。成り切ること。例えば美空ひばりになってみる。もし美空ひばりが怒ったと思って歌ってみたら、こんな声が自分の中にあったんだと気づいたりして。

 私、歌がほんとに下手なんですよ。

 結果的には個性だと思います。ほら、今お話している声だってすごく個性的で素敵だから、もうその時点で「あり」ですよ。

 勇気がわいてきました(笑い)。住んでいらっしゃる岡崎や三河への思いとか、メッセージがありましたら。

 私、岡崎が大好きです。東京のライブでも三河弁でしゃべっています。これからも岡崎を愛しながら、岡崎の人に可愛がってもらい、健康な毎日を送っていきたいと思っています。

 きょうは、ありがとうございました。


インタビュアー
川島 憂子さん
川島 憂子さん

ハープ奏者。2歳より音楽の基礎、4歳よりピアノを始める。1997年、スコットランドでハープに出逢い、転向。名古屋を中心にコンサート活動中。第9回大阪国際音楽コンクール入選。西尾市在住。