岡崎市の宮崎地区では400年程前から山々や清流に囲まれた農薬や化学肥料が混入しない自然環境のなかで湧き水を使ったお茶の栽培が行われてきた。この界隈は、農民や武士の健康維持のためにお茶の栽培を徳川家康公が奨励しており、年貢は米の代わりにお茶を納めさせていたという。
産地問屋「宮ザキ園」は、今から190年以上前から旧額田町の山間地、本宮山の麓でお茶の生産、加工、販売をしている。初代梅村喜六氏が創業した頃と変わらぬ味と香り、和の心、伝統、文化を発信してきた。15年程前には、県内では一番最初に無農薬、有機農法に成功し、現在でも味や香りのみならず、体に優しいお茶の栽培にこだわり続けている。
明治から昭和にかけては、全国の三大銘茶として重んじられてきたが、近年では、平地の少ない宮崎地区と、大量生産のできる静岡県や鹿児島県との生産量に格差がついてしまい、ペットボトル文化にはついていけず、伝統産業は衰退の一歩を辿っている。
代々続いた家業を見て育った六代目の篤志氏は「受け継がれてきた暖簾を自分の代で絶やすのは忍びない。地域全体を盛り上げることができたら」という思いで、農業高校、農林水産省国立茶業試験場を経て家業を継いだ。「大量生産できない反面、中山間地域だからこそできることがある」という六代目は「本宮山の種子」を使って独特のお茶を栽培している。他にも様々な種類のお茶をこだわりの手法で栽培している。
農園の一画に販売所があり、ここで直接買うことができる。口のなかにふんわり広がる独特の甘みが特長の玉露は、お茶好きにはたまらない香りと味で、遠方からの常連も多い。また、西三河界隈のJA、生協、スーパー、百貨店などで購入することもできる。
※この記事は2015年07月10日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。