「いらっしゃい! うちは歴史は古いけど、商品は新しいよ」 お客にもジョークを入れて、気軽に話しかける。そんな店主・稲吉重二さんの人柄が受けてか、テレビ取材も18回。「そこ知り板東リサーチ」(CBC)は二回も訪れている。
創業は明治31年。今も稲吉さん夫婦と、少人数のスタッフが昔ながらの手作業で仕上げている。
初代の周助さんは、養魚、鮮魚と、水産業で開業した。今のベッコウ姿焼きを始めたのは、二代目の喜一さんから。当時の鉄道省に姿焼きやえびせんべいを納品。「形原の名物」として駅の売店で販売した。その「名物」が今の店名となった。
三代目朝治さんと四代目の重二さんは二代続けて養子である。血縁では、つい甘えが出てしまう。「養子だと、店を、嫁を守っていこうという責任感が強いのでは」と稲吉さんは語る。
稲吉さんは毎朝4時、近くの形原漁港のセリへ。水揚げされたイカ、タコ、エビや魚たちを即加工すると、天日干しにし、姿焼きに焼き上げる。
「その日のものしか使わない。魚が入らない時はないままにする」と稲吉さん。安心、安全はふつうのこと。「冷凍ものやオフで売るのは失礼」と、正直な商いに徹している。「お客さんが裁判官です」。商品は店でしか売っていない。「自分の器に合ったように」と、支店もネット販売もない。
小学生たちの社会見学には積極的に応じている。地元の仕事への興味を持ってもらい、働くことの大切さを知ってもらいたいから。「地元に残ってくれて、私たちの仕事や意志をつないでくれたら、うれしい」と。
平成18年には全国観光土産品審査会で日本商工会議所会頭努力賞を受賞、同20年度蒲郡市観光協会推奨土産品に認定された。
※この記事は2011年04月10日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。