大蔵内


もともと廻船問屋だった石川家は、千石船で塩、米を江戸へ運んでいた。矢作川を遡って岡崎城へ納めることもあったという。当主が江戸と三河を行き来している1700年代の半ば以前、1500年代に大陸から伝わってきたと言われているみりんは飲み物(甘いお酒)で、とても高価だったという。1700年代の半ば以降になると、みりんは調味料として使用されるようになっていった。三河みりんの創始者、石川八郎右衛門信敦(石川家第二十二世)がみりんの製造を手がけたのは1772年(安永元年)だった。


 一流料理人や料理研究家の間で高い評価を受けている三河地方のみりんは、本みりんならではのコクと旨味が際立っており、その上、芳醇な香りと奥深い風味は、他とは一線を画すといわれている。その発祥の地三河は、温暖な気候風土、矢作川の水、米などの高品質な農産物など、醸造に適した条件と水運による販路に恵まれて、本みりん作りが栄えていったという。また、徳川家康公の生誕地である三河はお酒作りが盛んで米焼酎を作る酒粕が入手しやすかったことも要因のひとつと考えられる。


 蔵の入口にあたる階段を上っていくと、みりんの専門資料館「九重みりん時代館」がある。ここには、三河みりん及び石川家に伝わる古い道具や古文書が展示されている。壁に飾られている賞状を見ると、大正から昭和にかけての全国酒類品評会で名誉賞を3度受賞した醸造所だけに贈られる名誉大賞の賞状があった。この賞を受賞した醸造所は他にない。創業当時の醸造所の版画と、現在の醸造所建物と比べてみると、当時とほとんど変わらないことがわかる。もろみを搾ったみりんを熟成させる築300年の大蔵は、三河味淋最古の蔵で、国の登録有形文化財となっている。


九重みりん時代館

石川家に伝わる古い道具


 240余年、昔ながらの製法にこだわり続け、伝統の技に磨きをかけ、その歴史とともに刻んできた九重味淋。みりん業界最古の醸造元としてこれからも品質本位の本みりんを作り続けていく。


名誉大賞


九重味淋

所在地
碧南市浜寺町2丁目11番地 Google Map
ウェブサイト
http://www.kokonoe.co.jp