六代目明史さん


 江戸末期より200余年、足助町で7代続く鍛冶屋の老舗、広瀬重光刃物店。鉈や鎌、鍬など山仕事で使われる野鍛冶として始まり、代々受け継がれた技は刀匠としても指折りで、昭和27年には政府依頼の講和記念の日本刀もつくるなど大仕事もしてきた(銘:長運斎重光 通称・足助重光)。現在は、五代目雄一さんと六代目明史さん、七代目友門さん親子三代の手によって包丁、ナイフ、鉈、鎌などの手打刃物の製作、また農具などの修理、刃物の砥ぎ・修理なども行っている。


昭和初期の頃、政府の依頼で刀を鍛造している風景。左が四代目義雄さん、中央が五代目雄一さん。

 職人の置かれた状況を語るとき、真っ先に出るのが後継者問題。昔はそれぞれの村に一軒は鍛冶屋があったというが、大量生産で安く販売するメーカーなどに押されて、今や県下では数える程しか残っていないという。6代目明史さんも学校を卒業して鍛冶屋を継がず、音楽好きだったため音楽関係の仕事を選んだ。しかし、200年続く老舗を守るために戻ってきた。
 広瀬重光刃物店の刃物は鍛造品。たたかれているため分子構造が非常に細かく、切れ味が長持ちして、大きな刃の欠けもない。平均的な家庭の使用では一年以上研ぎ直し不要。その後も何度も研ぎ直し、刃が細くなっても使用できる。きちんと手入れをしていれば毎日使用しても通常10年以上は使えるという。舛添要一さん、近藤房之介さん、山崎ハコさんなど著名人にも愛用者が多い。


香嵐渓から歩いてすぐの店舗・作業場。2階はライブカフェ。


様々な種類の刃物が並ぶ店内。

包丁は8000円~1万円、ナイフ類は9000円~。長く使えることを考えると、この価格は高くはない。

 作業場のある店舗から歩いて数分のところに三州足助屋敷があり、そこで初代から変わらない作り方の実演を公開している。火花が飛び散る手仕事は見応えがある。「その時代に必要なもの、生活に密着したものを、使う人が使いやすい形でつくる。直しもやります」と語る明史さん。既製品もあるが、相談すればどのような刃物でも要望にお応えしたいという。
 鍛冶屋の2階は50人ほどでいっぱいになる手頃な広さのライブカフェになっており、明史さんが鍛冶屋をやりながら経営している。週末にはフォークソングなど様々なライブが開催されている。ライブのない時間帯や曜日は、気軽にコーヒーや食事ができる。


広瀬重光刃物店

所在地
豊田市足助町西町10 Google Map
電話番号
0565-62-0116
ウェブサイト
http://www.kajiyasan.com/