西三河の飲料水、農業・工業用水として使われるなど、私たちの暮らしに直結している矢作川。1990年代、川の自然環境に変化が生じ、アユが釣れなくなる、川底が緑色の藻類で覆われるなどの現象が問題視されるようになった。そして1994年、豊田市矢作川研究所が設立された。20年間、天然アユの調査のほか、外来生物の調査、流域の人工林の調査など、多彩な活動を続けてきた。
「20年前は分からなかったことが研究を重ねることで少しずつ分かってきた。川のバランスが崩れ、川が流れない、川底が固くなってきている」と総括研究員の間野氏は川の異変を語る。たとえば、水の流れないところに付着性のカワシオグサなどが大繁殖しアユが住みにくくなっているという。川底が固くなり動かなくなった事も原因の一つと指摘する。また、カワヒバリガイの異常繁殖でダムの通水障害を起こす可能性もあるという。他にも様々な異変がある。
これらを改善するために研究所は、多自然川づくりの提案をしたり、川底を掘り起こしたり、矢作川「川会議」や子供が参加する「矢作川学校」をサポートするなど、研究以外にも様々な活動を行っている。
私たちの矢作川は、これからどうなっていくのだろうか。それは私たち次第ではないだろうか。これから生まれてくる次代の子供たちへ、少しでも環境の良い矢作川をバトンタッチしたい。川を守るために川といかにつきあっていくのか、私たちに何ができるのだろうか。
このイラストは1950年代と2000年代の古鼡水辺公園周辺の景観。流路が下がる一方で河川敷への土砂の堆積が進み、竹林と樹林が広がってきている。
矢作川水系巴川の支流・太田川の多自然川づくりを行っていない区間と行った区間
※古鼡(ふっそ)プロジェクト
矢作川が抱える問題を総合的に研究するため、生物学、工学、社会学の研究者たちが地元住民、行政、民間企業との協働により、中流のダム直下の古鼡水辺公園周辺を主な調査地として、通称「古鼡プロジェクト」が行われた。
※この記事は2014年09月30日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。