愛知県立刈谷高等学校正門門柱(旧愛知県刈谷中学校正門)

愛知県立刈谷高等学校正門門柱(旧愛知県刈谷中学校正門)


刈谷市寿町にある愛知県立刈谷高等学校は、大正7年(1918)に開校した旧愛知県第八中学校を前身としています。
本校の正門は、当初、第八中学校の正門として計画され、校名変更を経て、大正12年(1923)に愛知県刈谷中学校正門として竣工しました。また、本校落成式の記念に制作された絵葉書や、当時の卒業アルバムなどから、この正門が竣工当初そのままの形で現存していることが確認できます。
門は鉄筋コンクリート造で、高さ3メートルを超える主門柱2本と、その外側にあるやや小さな脇門柱2本からなります。


愛知県刈谷中学校新築落成式記念絵葉書

愛知県刈谷中学校新築落成式記念絵葉書(刈谷市歴史博物館蔵)


様式や建築時期から、津島高等学校や鶴城丘高等学校の正門と同じ設計図で制作された可能性があります。これは、中等学校への進学希望者の増加により、短期間に多くの学校を建設しなければならず、共通の図面を使用したためと考えられます。
このため、愛知県下の13校には同じ様式の門柱が見られ、平成29年(2017)、同時に国の登録有形文化財となりました。


歴史的価値のある正門ですが、当初、刈谷に県立中学校を設置する予定はなく、半田町と西尾町に設置する案が、愛知県会に提出されていました。しかし、一部議員らの反対によりこの案は否決され、引き続き県立中学校の設置場所が課題となります。
そして、大正七年、大野介蔵・一造親子らの尽力や、刈谷町長らによる内務大臣・文部大臣への陳情など、積極的な誘致運動によって、刈谷町に第八中学校の設置が決定されました。当時の誘致運動の様子は、開校10周年に発行された記念誌に関係者の回顧録として記載され、刈谷町における誘致活動の一端を知ることができます。

紆余曲折の末に竣工した正門は、県立高校の顔として、現在も生徒たちの成長を見守っています。


所在地
刈谷市 Google Map
永井 優香子(刈谷市歴史博物館 学芸員)