(写真提供:神谷博基氏)

 日本の伝統的家屋の屋根には鬼がいる。瓦屋根に座す鬼瓦である。鬼の顔をしているから鬼瓦と呼ばれるが、雲、若葉、龍、大黒、恵比寿など様々な形がある。芸術作品といっても過言ではないが、鬼瓦は厄除けのために置かれている。「火災防止のために、水蒸気からできている雲、水分が多い若葉がモチーフにされてきた」と語るのは、高浜市で120余年、鬼瓦を手掛ける鬼源三代目鬼師神谷博基氏。
 ここ高浜で焼かれた瓦は三州瓦と呼ばれ、日本一の生産量を誇り、江戸時代以来全国にその名を知られてきた。粘土瓦の起源は、紀元前十四世紀頃ギリシャと紀元前十一世紀頃の中国で生まれたといわれている。日本に伝わったものは中国生まれのもので、日本最初の瓦の記録は、日本書紀にある「飛鳥寺を建てるにあたって朝鮮半島の百済から四人の瓦博士が渡来した」とある。
 戦国時代では、火の攻撃から守るために城に瓦を使用していた。江戸時代になると各地で城下町が発展し、密集した町なかで火災の延焼を防ぐ瓦の良さが注目されていく。八代将軍徳川吉宗の時代に防火のための瓦葺きが奨励されたこともあり町人に広まっていった。
 鬼瓦は奈良で発祥したといわれており、その後、三州瓦の産地である高浜市とその近郊に多くの鬼師が集まり、現在では日本のほぼ六割の鬼瓦がこの地で作られているという。手作りである鬼瓦は、各親方の流儀があり、それぞれ鬼の形相が違うのも興味深い。国宝級寺社仏閣も多く手掛けている鬼源の鬼瓦は、名古屋城天守閣の一部や城門、岡崎の天馬天神、海外ではハワイの平等院にもある。


鬼源三代目鬼師神谷博基氏。初代から使われている木造の工場にて。

 伝統の鬼瓦を作り続けている鬼源では、一般住宅の鬼瓦も焼成販売している。各種銀色鬼瓦始めとして釉薬鬼瓦、金焼家紋等、山野草手作り鉢など、ニーズに合わせて心をこめた製品を作っている。
 また、かわら美術館のある高浜市には「鬼みち」がある。市内の鬼師より寄贈された巨大鬼瓦のオブジェが美術館周辺に点在している。秋晴れの日に、鬼瓦を探しながら散策するのもいいだろう。


所在地
高浜市春日町三丁目8-8 Google Map
電話番号
0566-53-0727