えんちょこ獅子は、笛や太鼓に合わせて、曲芸ともいえる技を交えながら舞う二人組の獅子舞で、銭太鼓の後に行なわれることが特徴です。高浜市域のなかで「森前」と呼ばれた地域(現在の高浜市やきものの里かわら美術館周辺)で伝承されてきました。江戸時代の高浜村では、祭礼などで雨乞いや降雨のお礼に、組ごとで獅子や馬を奉納するという風習があったようです。これは大正期に作成された「祭典書類」に、享和3年(1803)に高浜村の各組が雨乞いで獅子を奉納したことが記されています。また、天保5年(1834)から明治5年(1872)まで高浜村の祭礼内容を記録した「御祭事略記」という資料でも、各組が獅子や馬を奉納したということが確認できます。江戸時代の高浜村には10の組(上組、小組、寺内組、中納組、北海戸組、真組、西之根組、森前組、荒井組、田戸組)があり、獅子舞はそれぞれの組に存在したようです。そのなかで、森前組の獅子舞が現在のえんちょこ獅子に繋がっていると考えられています。明治期以降も地域でその技は受け継がれ、昭和30年(1955)に保存会が発足し、昭和40年には愛知県無形民俗文化財に指定されました。文化財指定段階での祭日は、春日神社大祭10月4日(高浜のオマント祭日)、森前秋葉社大祭11月4日となっていますが、現在この両祭日には行なわれておらず、地域行事などで披露されています。平成5年(1993)には高浜市立南中学校に、えんちょこ獅子の部活動が発足。令和4年(2022)現在も、保存会と中学校が両輪となって伝承活動が行なわれています。
※この記事は2023年01月01日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。