棒の手奉納 猿投神社

棒の手奉納 猿投神社


 毎年10月の第2土・日曜日に行われる猿投神社(豊田市)の祭礼で奉納される棒の手は、棒や刀、槍、鎌などを打ち合わせる勇壮な郷土芸能です。猿投神社の祭礼の歴史は古く、中世末から近世初めにかけて、地域的にまとまった村々で組織される合宿による献馬(馬の塔、オマント)の形態が整えられていったと考えられています。18世紀末~明治初期の最盛期には、三河・尾張・美濃から10余の合宿、180余村が祭礼に参加し、豪華な標具(ダシ)などの馬道具で飾り立てた馬が奉納されました。

 祭礼では村同士のいさかいが起き、馬に乗せた標具を奪い合うこともありましたが、これには、他村と張り合うことで、村の結束を強化するという意味もありました。祭礼に参加する村人は馬を警固するために武装し、それが棒の手の始まりであるといわれています。

 一方、祭礼を始める前に行う、場を清める行為が棒の手の発祥ともいわれ、明らかにはなっていません。現在では、五穀豊穣祈願のための奉納演技として、10を超える流派が伝えられています。伝承地域は、三河と尾張の国境付近を中心に、奥三河や知多半島、尾張西部にまで及び、村を越えて免許皆伝の目録が授与されることもありました。棒の手が奉納された代表的な寺社としては、猿投神社のほか、熱田神宮(名古屋市)、龍泉寺(同)が挙げられます。


飾り馬と警固 猿投神社

飾り馬と警固 猿投神社


 棒の手は戦国時代に始まるともいわれますが、同時代の資料上で確認できるのは江戸時代であり、豊田市で普及するのは明治に入ってからのところが多いといいます。その後、第二次世界大戦で衰退してしまいますが、保存会の発足など郷土の芸能を守る動きもあり、昭和30年代に各地の棒の手が県の指定を受けました。現在では、子どもから大人まで参加する地域の交流の場ともなり、大切に受け継がれています。

豊田市郷土資料館(豊田市役所生涯活躍部文化財課)
住所
愛知県豊田市陣中町1-21-2
電話
0565-32-6561
FAX
0565-34-0095
HP
http://www.toyota-rekihaku.com
mail
info@toyota-rekihaku.com

所在地
豊田市 Google Map
山田佳美(豊田市郷土資料館 学芸員)