遠州灘の魚しか使わない。
幸田町のごくありふれた町並みに、そっと控えめに建っている。落ちついた木造りの店。客席からは厨房がそのまま見渡せる。店主・井上雅夫さんの手際よい包丁さばきや調理の様がすべて分かる。このオープンな厨房が井上さんの腕の確かさを立証しているといえる。
井上さんは高校卒と同時に蒲郡の常磐館(現、蒲郡クラシックホテル)で板前修業、その後、京都の茶懐石「美濃幸」、東京・銀座の料亭「花蝶」で腕をみがいた。27歳の時、東京・日本橋の天ぷらの「稲ぎく」の米国NY出店とともに渡米。NYでは三ツ星の仏料理店「シェ・レネー」でも働いたあと、友人とともに日本料理店「シャロム・ジャパン」を開業した。17年のNYでの料理人生活を終え、ここ幸田町で「ヤムヤム」を開店した。
注文があれば欧風料理も出すが、やはりここでは和食が中心だ。「素材に手を入れない」「旬の先どりはしない」を心がける。「茶懐石の基本は、素材を大切に、食べれるものを食べやすくお出しすること」と井上さん。蒲郡市形原で漁師をしている兄は遠州灘を漁場としており、水深200m前後の魚ばかり。毎朝揚がったその魚しか使わないという徹底ぶり。「一人で出来る分しか作らない」ので、予約も20人まで。昼膳は2,000円から。
長年、練り込まれたその一級品の技と味は知る人ぞ知るところとなり、名古屋、豊田方面から、わざわざ足を運ぶ客も多い。
※この記事は2001年01月10日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。