挽きたて、打ちたて、茹でたてにこだわる
「十割そばは、そば粉100%で打つため、二八そばに比べて風味が強く美味しいというイメージがありますが、実際は食べ比べてみてはじめて違いがわかります」と語る店主。そばへのこだわりを聞いてみると「そばを仕入れると、その時点から劣化がはじまります。香りがとんでいき、味も悪くなっていく。できる限り酸化(劣化)を防ぐために玄そばを仕入れている」という。玄そばは粒がバラバラなので粒揃えをし、脱皮機にかけて皮を剥いていく。挽きたてのコーヒーは香りが良いのと同じ理屈なのだろう。
食感についても驚いた。一般的に十割そばというと、香りは良いが、つなぎの小麦粉を混ぜていないためどうしてもボソボソ感があり切れやすい。ところが、ここの十割そばはボソボソ感があまりなく箸で持ち上げても切れにくい。その秘密を聞いてみると「ボソボソになってしまった時は異なる産地のそばをブレンドして、なるべく食感の良い十割を目指している」とのこと。「二八と十割、両方打っているが、まだまだ十割は発展途上であり、もっと勉強しなければいけない」と謙虚な姿勢に好感が持てた。
茹でることもとても難しいという。そばは水溶性なので茹でるとそばが溶けてくる。そうすると沸点が下がり、そばがうまく茹らない。だから、濁ってきたらマメに鎌のお湯を交換する。一人のお客様に対しても、そのこだわりは変わらない。
天ぷらも評判がいい。今回取材したメニューは「牡蠣の天ぷらセット1,400円(税込)」100円増しで二八を十割に変更していただいた。形原漁港で水揚げされている新鮮な旬ものが天ぷらのメインで、季節によって変わる。冬は牡蠣(3月下旬ごろまで)、初夏は穴子、秋頃はイカとなる。珍しい牡蠣の天ぷらは、フライよりも牡蠣をダイレクトに感じることができる。
※この記事は2019年01月01日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。