消え行く日本の暮らしを体感
明治から昭和30年頃までの山里農家の暮らしを再現した三州足助屋敷。見事な紅葉で知られる香嵐渓の中心にある足助屋敷に一歩足を踏み入れると、タイムスリップしたような懐かしさを感じる。ここにある茅葺き屋根の母屋や土蔵などは本物で、昔ながらの手仕事や年中行事など、消え行く昔の日本の暮らしを体感・体験することができる生きた民俗資料館である。
わら細工や機織りなど、ここで実演されている手仕事は、民芸でも伝統工芸でもない。自分の生活に必要なものは自分で作るというしたたかな山の生活が蘇っただけなのだ。土から離れ、手足を使わなくなった現代生活が慈しみを忘れ、いかに貧しいものなのかを考える機会を提案している。
❶ 母屋
昭和30年代の豪農の母屋をモデルに再現。中では囲炉裏やクド、お風呂などの山里の暮らしを見ることができる。ここでは、わらぞうりやムシロなどのわら細工と機織りの実演が行われている。
❷ 土蔵
蔵の壁は小舞と呼ばれる竹が骨になっており、厚みが24センチある。室内の温度変化が少なく、火事にも強い構造。室内には、傘屋、桶屋がある。夏には昔ながらの養蚕道具を使って蚕を育てている。
❸ 萬々館
ここでは常時、展覧会やコンサート、篭教室、物産展など、よろずのことに使われている。取材時は、からさわてるふみ氏の「足助屏風を描く展」が開催されていた。
❹ 工人館
部屋が3つあり、中央の部屋では紺屋が作業をしている。灰汁を使う昔ながらの手法で藍を建て、本格的な藍染め実演が見学できる。虫除けや殺菌効果に優れており、なおかつ美しい藍染めは、化学染料が登場するまで日本の主な染め技法だった。
❺ 水車
かつては暮らしを支える大切な動力源だった水車。この動力を使って米や麦などを精米し、木地師はろくろを回した。明治以降は、製糸・製材にも使われていた。水車小屋の隣では紙すき実演が行われている。
❻ 紙すき
紙すきは冬の農家の大切な仕事だった。足助和紙は「三河森下紙」と呼ばれる純生漉和紙で楮100%。丈夫な紙で二枚漉きに特長があり、番傘の紙としても使われている。
❼ 炭焼き
炭材に適しているカシ、ナラ、アベマキが使われ、焼かれた炭を堅炭と呼ぶ。足助の山から炭材を切り出し、15日がかりで50俵できる。
❽ 鍛冶屋
江戸時代末期から200年以上続く足助の鍛冶屋。丹念に手でたたいて作る刃物は切れ味抜群で何度でも修理ができる。かつては刀鍛冶だったが、現在では農産林道具や家庭で使用する包丁、ナイフなどを手掛けている。
❾ 篭屋
足助は上質な竹の産地。真竹、淡竹、黒竹、雲紋竹などの様々な種類の竹を用途によって使い分けている。竹ひごが作れるようになれば一人前だという。
❿ 木地屋
ろくろを使ってケヤキやトチ、山桜などの木を削り、盆や椀などの丸い器を作っている。大まかに挽いたものを1~2年以上乾燥させて、様々な種類のカンナを使って完成させていく。
鮎の塩焼きと手作り豆腐が付いた桧定食1300円(税込)桧茶屋にて。豆腐は夏限定。
※この記事は2014年10月10日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。