江戸から数えて東海道三十八番目の宿場である「岡崎宿」。その面影を残す岡崎市康生通には、今も多くの老舗が暖簾を守っている。和菓子の旭軒元直も、創業百年を越える風雅さが漂っている。
もともとこの場所で、菓子店を営んでいた。初代の伊藤直平は新たに和菓子の技術を習得。そして三代目伊藤勝嘉により店舗拡大とともに初代直平より一字頂き「旭軒元直」と命名し今に至る。
銘菓「阿わ雪」や「小豆羊羹」「三河黒松」など、当時からの味を伝える商品も多いが、その伝統と技を引き継ぎながらも、時代にあった商品開発を心がけている四代目仁志さんへと継がれている。
「終始一貫」して守ってきたことは、お客さんに喜んでいただけるお菓子。そのためには、いいもの、自信のあるものをお出しすること。小豆、砂糖など素材も吟味し、有機農法で育った国内産を中心に用意。季節に合わせ、時代に合わせて、菓子づくりに取り組んできた。
伝統の味と暖簾を守っていくためには、常に時代のニーズに合わせた商品開発が欠かせない。伝統の力を今に生かす、昔のものを新しい形のものに。八丁味噌を取り入れた、みそまんじゅう、カステラ風の大樹寺松風。最近では、こしあんときざみ栗をパイ生地で包んだ和洋菓子「開運貫木」も。ジャズのまち・岡崎をイメージした「ジャズストリート」、女性好みの「長寿の舞」なども、ソフトな甘さで好評だ。
今では東公園前店、大樹寺店も構えた。「やっぱり旭軒だね」と、むかしからの常連のお客が多い。岡崎のお土産として贈呈するお客も。岡崎にいた人が離れても、「懐かしいから」と注文してくれる。「とてもうれしいことです。お客さまの喜びが私たちの喜びですから」と、奥さんの伊藤尚美さんも語っている。
※この記事は2013年04月10日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。