碧南市はお寺が多く、大浜てらまち地区をはじめ、お寺巡りを楽しめるスポットがいっぱいある。市の南東部に位置する棚尾地区もその一つだ。昭和の面影を残す町並を眺めながら入り組んだ路地を歩けば、風情のあるお寺に行き当たる。
1. 多聞山 妙福寺(志貴毘沙門天)
「毘沙門通り」という通りに、古来より「勝運の神」として霊験あらたかなことで知られる毘沙門天をお祀りする妙福寺がある。秘仏の毘沙門天は聖徳太子の作と伝えられ、日本三体毘沙門天の一体と称されている。創建はおよそ1200年前の仁寿元年(851)とされる、歴史のあるお寺だ。
毘沙門天祭礼
毎月3日に開催される祭礼では、終日大般若祈祷が行われる。参拝者は大香炉で焚かれるお香の煙を浴びて心を清める。境内では縁日が開かれ、大勢の人でにぎわう。おみくじも人気。
三河新四国霊場札所
弘法大師も祀られ、三河新四国73・74番札所となっている。巡礼のため訪れる人も多い。
多くの神様を祀る
毘沙門天のほか、阿弥陀如来(本尊)、聖徳太子、四天王、風神雷神など多くの神様が祀られていて、ぐるっと巡るだけでもありがたい気持ちになる。楼門に吊るされた「繁栄の鐘」は、参拝に来た人はだれでもいつでも撞くことができる。
2. 龍蓬山 安専寺
1000年前の長和5年(1016)に天台宗のお寺として創建され、室町時代の応仁2年(1468)に蓮如上人から南無阿弥陀仏の直筆六字名号を賜って、浄土真宗に改宗した。この墨書六字名号は、碧南市指定文化財となっている。
どっしりとした山門
妙福寺から通りをはさんで一歩路地に入ると、重厚な佇まいの山門が現われる。山門の向こうに見えるのが鐘楼だ。
昭和モダンな雰囲気の本堂
昭和38年(1963)に再建された、鉄筋コンクリート2階建でモダンなデザインの本堂。どこかレトロな雰囲気もあっておしゃれ。
故郷に戻った梵鐘
昭和17年(1942)に戦時供出した鐘は奇跡的に生き残り、東京深川の埋め立て地にあったようだ。その後埼玉県の寺院に払い下げられ、ずっとそのお寺で活躍していた。不思議な運命をたどった鐘は、ついに平成23年(2011)、69年の歳月を経て安専寺に戻ってきた。現在は平和のシンボルとして本堂内で公開されている。
3. 解脱山 光輪寺
昔は天台宗の霊場だったが、安専寺と同じく応仁2年の蓮如上人による三河巡化をきっかけに浄土真宗に転宗し、六字の尊号を賜って真宗総道場になったとされている。碧南出身の俳人・永井賓水が師事した高浜虚子が句会を開いたお寺としても知られる。
威風堂々の門構え
黒板塀と堅牢な石垣、本瓦葺きにしゃちほこ。まるでお城のような雰囲気をたたえた重厚な山門や、一風変わったアーチ状の石造り通用門に目を引かれる。本堂は文政9年(1826)に再建された。
本尊は阿弥陀如来立像
ご本尊の木造阿弥陀如来立像は、13世紀半ば(鎌倉時代)に運慶・快慶次世代の快慶派系仏師によって作られたとされる優れたもので、碧南市文化財に指定されている。
※この記事は2019年10月01日時点の情報を元にしています。現在とは内容が異なる場合がございます。